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2019-07-09

ZF、8速ATをハイブリッド向けに新開発

  • 新しいモジュール設計によって、48Vのマイルドハイブリッドと出力160kWまでのプラグインハイブリッド両方に対応
  • パワーエレクトロニクスをハウジングに収めることで、完成車の生産を柔軟かつシンプルに
  • 全てのコンポーネンツと制御ソフトウェアをハイブリッド用に開発

フリードリヒスハーフェン発;これまでハイブリッド・トランスミッションは、高効率なオートマチック・トランスミッション(AT)のトルクコンバーターをパワー密度の高い電気モーターに換えて造られています。一方、ZFの新世代8速ATは、ハイブリッド化を前提に開発されました。新型トランスミッションは、モジュール設計によってマイルドハイブリッド、フルハイブリッドおよびプラグインハイブリッドに対応し、出力も24kWから160kWまでが選択できます。パワーエレクトロニクスは外付けでなくハウジング内に収められているため、トランスミッションユニットのサイズが大型化することもありません。ZFは小型の油圧制御ユニットも新たに開発し、電動および電気系部品に必要なスペースも確保しました。

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ZF、8速ATをハイブリッド向けに新開発

プラグインハイブリッド:高いパワー密度の新しいモーターを採用

ZFは、2030年に販売される新車の少なくとも70%は、内燃機関を搭載していると予測しています。そのような中、プラグインハイブリッド化が、エンジンによるCO2排出量を大幅に削減できる可能性を持っています。そのためには、航続距離とパワー両面において、日々の走行がバッテリーだけで可能なレベルに達することが必要です。ZFはこの課題に対するソリューションとして、新世代の8速ATを開発しました。モーターは最大出力160kW、連続出力80kWを発生します。エンジンを始動することなく、モーターだけで450Nmのトルクを発生するため、電動走行時でも迅速な追い越しが可能です。ZF内製の新開発モーターには、従来の銅線コイルに換えて溶接した銅製ロッドを使用することで、サイズを大幅に変えることなく高いパワーを実現しています。「ヘアピンテクニック」と呼ぶこの技術は、パワー密度を左右する銅の密度を大幅に高めることができます。

マイルドハイブリッド:バリエーションが鍵

およそ300ボルト(V)の高電圧を使用するプラグインハイブリッドに加え、マイルドハイブリッドも今後数十年にわたって大きな役割を担っています。48Vを使用するこのシステムは、エネルギー回生でCO2排出量の削減に貢献します。さらに、エンジンが比較的多く汚染物質を排出する発進および加速時にサポートを行うことで、汚染物質の排出量低減にも役立ちます。48Vドライブは駆動系のいくつかの場所に装着が可能です。エンジンアウトプット側のクランクシャフト(「ポジション1」)とインプットシャフト(「ポジション2」)が特に効率的です。ZFの新世代ユニットは、どちらのタイプにも対応しています。モーターは25kWの最大出力を発生し、現実的にエンジンのあらゆる作動パラメーターを最適にサポートします。

パワーエレクトロニクス:トランスミッション内に統合

モーターを制御するのがパワーエレクトロニクスです。バッテリーからの直流電気をモーターに適した交流に変換するとともに、モーターのパワーとスピードをコントロールします。現在のシリーズハイブリッド用パワーエレクトロニクスは、靴箱ほどのサイズがあります。ZFは、4世代目の8速ATで、これをトランスミッションハウジング内に収めることに初めて成功しました。ハイブリッドドライブの車体への組み付けにおける複雑さが解消され、通常のトランスミッションとほぼ同様となるため、完成車メーカーに大きなメリットをもたらします。さらに車内の高電圧ケーブル数も減り、安全性の向上につながります。

トランスミッションのサイズを変えずにパワーエレクトロニクスを内部に収めるには多くの課題がありました。ZFは、様々な改良に加えて冷却系に新たな考え方を導入することでこれを解消しました。特に高電圧モデルのIGBTで顕著ですが、パワーエレクトロニクスに使用されている半導体は熱を持ちます。ZFは、パワーエレクトロニクスを車の空調システムの冷却系に接続することでこの問題を解消しました。

さらにギヤシフトを行う油圧システムの大幅な小型化も行いました。これまで3.1リッターだった8速ATの油圧制御ユニットは、1.8リッターとコンパクトになっています。これは主に、ダイレクトシフトバルブを使用することで実現しました。エレクトロマグネティック(電磁)アクチュエーターの採用により、これまでの電動プレッシャーアクチュエーターに必要だった追加のピストンやブッシュ類が不要になりました。

ハイブリッドへの最適化

新しい8速ATに追加されたパ―ツは全てハイブリッド用を念頭に設計されています。これまでのトランスミッションでは、エンジンが直接駆動するベーンセルポンプと電気走行時に作動する電動ポンプまたはパルスメモリー方式と、オイルポンプが2基使用されています。これが、次世代型ではパワースプリットポンプ1基になります。エンジンが停止している状態では、直結された小型のモーターが作動します。

新しいトランスミッションは、その機構もハイブリッドに適した設計がされています。4つのプラネタリーギヤと5つのシフトエレメントはこれまでと同じですが、フリクションパワーの改善により効率化を向上させました。その結果、エンジン駆動時におけるCO2排出量は1キロメートル走行あたり1グラム減少し、電気駆動での航続距離も延びています。

快適性の確保

特にプレミアムセグメントにおける、高い快適性とノイズ低減への要求を満足するため、新しい8速ATは縦置きトランスミッションとして設計されています。信頼性の高い機械的技術の採用により、ハイブリッド操作(走行)時にも、高い要求を達成しています。さらにZFが開発した遠心振り子ダンパーの最適化で、電気駆動からエンジン駆動への切り替えにドライバーがほとんど気付かないレベルまで振動を抑えています。将来的にトランスミッション制御モジュールはエンジン特性マップではなく、全システムコンポーネンツの数学的モデルに基づいた制御を行う様になります。これは、将来に向けてますます複雑化しているドライブラインに対応するため、必要不可欠になるでしょう。

次の10年に向けて

ZFは、この新世代の8速ATの量産を2022年からドイツにあるザールブリュッケン工場で開始し、中国と米国における市場投入を予定しています。このようにZFは、電気自動車(EV)の即時普及が難しい市場セグメントにおいてもCO2排出量の削減に貢献できる様、ハイブリッドの普及にも力を入れています。

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