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2023-06-29

トルク密度で世界の頂点に:ZF、最もコンパクトな乗用車向け電動ドライブを発表

  • 新しい800V電動ドライブのプロトタイプを搭載したコンセプトカー「EVbeat」が、小型、低重量、高効率の新しい基準を提案
  • 70 Nm/kgを誇るトルク密度
  • パワーパックの重量を1/3削減
  • ZF開発の熱管理システムにより、電気自動車の冬期実走行距離を最大1/3伸長

ドイツ、フリードリヒスハーフェン発; フリードリヒスハーフェンで開催されているグローバルテクノロジーデー(Global Technology Day)において、ZFは、小型、軽量、および実走行での最高効率を目指して設計された電動コンセプトカー「EVbeat」を発表しました。このコンセプトカーは、トルク密度70Nm/kg、重量74kgの超小型軽量ドライブラインを搭載し、車両全体の熱管理、クラウドネットワークに接続されたソフトウェアなど、電動ドライブラインシステムとして最適に統合されています。氷点下前後の寒冷時には、現技術と比較して実走行航続距離を最大1/3の伸長が可能です。

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トルク密度で世界の頂点に:ZF、最もコンパクトな乗用車向け電動ドライブを発表

「持続可能なモビリティは、当社の企業戦略の中核を担っています。」と、電動ドライブラインシステムを統括し、ZFのボードオブマネジメントのメンバーのシュテファン・フォン・シュックマンは述べています。「非常に効率のよい生産車両をベースに私たちの電動ドライブラインを組み込むことで、未来の電動ドライブコンポーネントがどれだけの効果を提供できるかを、我々は示しています。」

ZFの「EVbeat」コンセプトカーは、ポルシェ・タイカンをベースに、ZFや他のプレイヤーの代表的な技術をベンチマークとして取り入れています。

ZFの電動ドライブラインシステムの開発責任者であるオトマール・シェラーは次のように述べています。「我々の目標は、高いドライビング・ダイナミクスを保ちつつ、このドライブを可能な限り小型軽量化し、実走行での効率性を高めることでした。トルク密度に関しては、現在市販されている乗用車用電動ドライブと比較して、業界をリードしています。同時に、開発中は持続可能性の観点を重要視しました。」電動モータは重希土類を使用せず、熱管理システムにもフッ素系冷却材を使用していません。電動ドライブおよび熱管理システムの部品点数の削減とシステム重量を1/3削減し、生産と使用の両側面において、持続可能性により大きく貢献しています。

EVSys800:超小型かつ軽量800Vドライブ

EVSys800はモジュラ型800Vドライブで、SiC搭載のパワーエレクトロニクス、電動モータ、減速機で構成されています。非常にコンパクトなデザインと軽量さにもかかわらず、EVbeatのパフォーマンスに妥協はありません。このコンセプトカーのリアアクスル最大トルクは5200Nmを出力し、そのトルク密度は公道を走行する乗用車向けとしては他に類を見ないほど高く、ドライブトレインのトルク密度は70Nm/kgです。電動モータの定格出力と最高出力はそれぞれ206kWと275kWで、最高出力時の約75%の定格出力を実現します。

寸法に関しては、コンパクトな減速ギアボックスとZFが特許を取得したモータの「編み込み式巻線」技術により、モータ長を50mm削減、ドライブアクスルの省スペース化と同軸化を可能にします。

総重量74kgのEVSys800は、ZFの最新800Vシリーズドライブと同等の出力を発生しながらも約40kgまたは1/3軽くすることで、コンセプトカーの軽量化に大きく貢献します。

定格出力向上のために不可欠なのは、新しい冷却コンセプトと新しい巻線技術を備えた電動モータです。冷却については、運転中に最も熱が発生するポイントとなる巻線の周囲に直接オイルが流れるようにします。このような非常に効率的な冷却は、重量およびスペースに影響を与えることなく性能を大幅に向上させます。さらに、重希土類の使用を省くことで電動モーターをよりサステイナブルに生産することができます。ZFが開発・特許を取得した「編み込み式巻線」技術はいわゆる波巻きをさらに進化させたもので、この方式により、モータ設置スペースを合計10%削減できます。巻線ヘッド単体では従来方法に比べ約50%までサイズを低減でき、銅使用量を約10%低減できています。

電動ドライブのインバータは、一から再設計されました。全ての基幹部品が根本的に見直されました。電磁両立性、パワーモジュール、キャパシタもそれぞれ、設置スペース、重量、持続可能性が大幅に改善されています。

新しい同軸減速ギアボックスは、2つのプラネタリー・ギアセットを介して、電動モータの駆動力を伝達します。所望の減速比を実現するだけでなく、ディファレンシャル機能も有しています。従来の平行軸コンセプトと比較して、同軸ソリューションは、効率、ノイズ、振動性能を犠牲にすることなく、重量と設置スペースを低減できます。編み込み式巻線と組み合わせることで電動ドライブを大幅に短くすることができ、あらゆる車両設置スペースに取り付けることができます。

「このシステムは、効率、パフォーマンス、コストなど、お客様の主な要件を完全に満たすことができます。」とDr. オトマール・シェラーは述べています。新しいZFドライブラインの最初のテクノロジーは、2026年に上市予定です。

熱管理:パワートレインと車両全体の効率的な温度制御

冬期の車両の温度制御は、車両に必要なエネルギーの大きな割合を占め、特に暖房運転中には3〜6キロワットにもなることがあります。乗員にとって、夏の快適な涼しさと冬の暖かさは、快適性の重要な要素です。適切な温度制御は、電動モータ、パワーエレクトロニクスそしてバッテリーのパフォーマンスに不可欠な要素でもあります。

EVbeatコンセプトカーには、ZFが開発した初のEV用中央熱管理システム(TherMaS)が組み込まれています。TherMaSは、中央ユニットとインテリジェントソフトウェアを介して、ドライブラインと車内のすべての熱プロセスを制御します。この新しいデザインにより、電気自動車の冷暖房に関する従来アプローチと比較して、スペース要件と重量を大幅に削減します。プロパンを使った800Vのヒートポンプは、エネルギー消費量も大幅に抑えることができ、コンパクトでシンプルな設計なため、車両に簡単に組み込むことができます。

TherMaSのコンセプトでは3つの冷却回路を有しています。中央にある冷媒回路は非常に小さく、あらかじめ充填、密閉されているためメンテナンスフリーです。さらに車室内など他の車両部分とのインターフェースはありません。ZFではフッ素フリーのプロパンを使用しており、従来の半分の冷媒で一般的な冷媒に比べ冷却能力は2倍向上しています。中央の冷媒回路は不凍液が入ったクーラントが流れる2つの冷却回路に接続されています。1つ目の回路はモータ等の比較的高い温度のコンポーネント用で、2つ目がインバータ、充電器などの電子機器の温度管理を担います。これら回路は制御ソフトウェアにより冷却性能を調整しています。

このような総合的な熱管理によって、EVbeatの航続距離は、寒冷時では最大3分の1まで伸長します。また非常に優れた冷却性能により、電子部品の高い連続出力が可能になります。

パワートレインソフトウェア:車両ドライブとクラウドを効率的にネットワーク化

ハードウェアの特性は、車両の持続可能な運用のために重要な基盤ですが、その最適な編成はソフトウェアによって実現されます。ZFはすべての車両システムを相互にネットワーク化し、ZFのクラウドに接続する、独自のパワートレインソフトウェアを開発しました。

電気モータの効率は作動温度に左右されるため、常に最適な範囲に保つことが重要です。低速で高トルクが要求される場合の最適な熱動作点は非常に低くなり、高速で低トルクが要求される場合、高温は問題になりません。しかし、熱条件は急に成立させることはできません。ZFのドライブラインソフトウェアは、それぞれの運転プロファイルから最適な動作点を予測し、それに応じてシステムを準備することができます。ドライバーの行動を「学習」し、AIを活用したクラウドサービスを通じて、個々の運転プロファイルの確率を予測することができます。例えば、短距離走行が検出されると、エアコンやシステム冷却は低減されます。

これに基づき、アシスタントシステムは、電気自動車の効率的な使い方についてドライバーに直接アドバイスすることもできます。例えば、効率的な加速と減速や、最適化された最高速度が表示されます。これは特に、走行前に正確で実用的な航続距離を計算し、確実に実行する場合に役立ちます。

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Naosumi Tada

Representative Director and President ZF Japan Co., Ltd.

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